- Articles
シンガポールの人口は中華系(74.3%)、マレー系(13.3%)、インド系(9.2%)で構成されており、公用語は、英語、華語(中国語)、マレー語、タミル語です。そのうち英語は社会の共通語であり、国民の第一言語(first language)とみなされ、1987年より学校教育の言語となっています。
シンガポール英語は「標準シンガポール英語(Standard Singapore English)」と「口語体シンガポール英語(Colloquial Singapore English)」に大別されます。後者がいわゆる「シングリッシュSinglish」と呼ばれるインフォーマルな場で話される英語であり、中国語(主に福建語、広東語、マンダリン(北京語))とマレー語の要素が含まれています。
シングリッシュの特徴として最も挙げられるのは、福建語を語源とするlahという間投詞を文末に入れることです。leh、lor、ah、maといった間投詞もよく使われます。また、マレー語起源のkenaは「余儀なくされる」という意味でよく使われます(会話16と38)。語法も特有のものが多くあり、例えば「来週末、来られますか」を“Next weekend can?”と言い、それに対する答え「はい、来れます。」は“Can.”となります(会話22)。
発音については、語末の子音が発音されないことが多く、二重母音が単母音になる傾向があるため、例えば“quite late”が「クワイッレッ」のように聞こえます(会話3)。また、morningやnothingなど、通常、第一音節にアクセントがある語は、第二音節にアクセントが置かれる傾向があります(会話21)。
シンガポール政府は2000年以降、シングリッシュを排除する言語政策を実施していますが、シングリッシュは多くのシンガポール人に親しまれています。シングリッシュは、シンガポールで自然に発生し、そこで進化した話しことばです。シンガポール人にとっては合理的な話し方であり、親しい間柄では自分たちの気持ちを最も自然に表現出来る「彼らの英語」なのです。高学歴の人ほど、場に応じて標準シンガポール英語とシングリッシュを使い分ける傾向があります。(シンガポールの言語状況と言語政策についての詳細はこちら)
出演者たちは、日本在住のシンガポール人です。シングリッシュの出方には個人差があります。会話1に登場する男性と女性はインフォーマルな場面でも比較的わかりやすい英語を話しますが、会話3に登場する男性二人はインフォーマルな場面では、かなり特徴的なシングリッシュを話します。 「1.挨拶する」から「20.人を紹介する」は、シンガポール特有の語彙や語法を多く含む会話です。これに対して「21.感謝する」以下の会話は、基本的には他の英語会話モジュールと同じスクリプトで、部分的に語彙や表現をシンガポール英語のものに変えています。
監修:矢頭典枝(神田外語大学)、斎藤弘子、吉冨朝子(東京外国語大学)
協力者:Adrien Koh、Derrick Leong、Brian Lin、Eri Ting Hui Li、Amanda Ng、
Rachel Ho、 Kezia Soh、新城真里奈、黒岩健人